恋のレッスン

休憩時間中くつろぐバルコニーのお客。

 

 一時間二十分で休憩時間になった。座って見ていたバルコニーの人たちは一斉に立ち上がり、立って見ていた土間の人たちは座り込む。僕もその場に腰を下ろす。足の位置を変えようとして足を動かすと、足の甲が攣った。痛てて。やはり、一時間半近くずっと立っていると、一部の筋肉ばかりが使われ、疲れているようである。隣に立っていたカップルは、アイスクリームを買ってきて食べている。見上げると、円筒形の建物の上の空には雲が広がってきている。先ほど遠雷が聞こえたが、幸い雨の心配はなさそうである。

 休み時間中、舞台の上にあるバルコニーに陣取った楽団が、音楽を演奏している。彼らは、上演中、歌の伴奏や、効果音も担当しているわけである。先ほども書いたが、この芝居、よく歌が入る。しかし、休憩時間に演奏されている曲は、サキソフォーンなどが入って、どっちかと言うとモダンな、ジャズっぽい曲である。

 十五分して、道化師がスキップをしながら再び舞台に飛び出してきて、芝居の後半が始まる。オーランドはロザリンドを讃える詩を書き、あちらこちらに撒き散らす。オーランドがその詩を書いた紙を撒いているとき、場内整理の人たちも、バルコニーの上からも紙を撒いた。劇場内に大量の紙がヒラヒラと舞っている。ロザリンドはその詩を拾って読むことにより、オーランドが自分に寄せる想いを知るのである。

 オーランドは、こともあろうにロザリンドに対して(彼は相手がロザリンドであると思っていない)、ロザリンドをどのように口説いたらよいのかの相談を持ちかける。それに対して、ロザリンドは、口説き方のコーチをする。しかし、そのレッスンについつい身が入りすぎて、オーランドにキスをしてしまう。それにより、オーランドは、相手が女性で、しかもロザリンドあることを知るのである。さすがに、キスまでされると、相手の素性が分かるのである。遅いよ、君。ロザリンドがオーランドにキスをした瞬間、観客も、

「ウォーッ」

と盛り上がり、拍手が起きた。

 その辺りから、ストーリーはかなりご都合主義に走り出す。というかやりたい放題。

@     道化師が村の女に惚れ(これがまた普通の田舎のおばさんなのである)、彼女にプロポーズする。

A     羊飼いの青年がある少女に恋をして求婚するが、その少女はこともあろうに、男装をしたロザリンドが好きになってしまい、青年をソデにしようとする。(男装のロザリンドはなかなかハンサム、彼女の気持ちはよく分かる。)

B     喧嘩別れをしたオーランドの兄が訪れる。オーランドはライオンに襲われた兄を助け負傷する。(舞台はフランスのはず。何でフランスにライオンがいるねん。)助けられた兄は、ロザリンドに付き従うシリアを見て一目惚れする。

「面白ければよい、笑わせればよい」という吉本新喜劇でも、もうちょっとは現実的なストーリーの展開があるのでは、そんなことを思ってしまう展開になってくる。

恋のレッスンをするオーランドとロザリンド。

 

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