クリフトン吊り橋へ

運河に沿って歩く。

 

義母の持っている「地球の歩き方」によると、「クリフトン吊り橋」という、有名な橋があるそうな。そこを見に行くことにする。案内書によると、歩いてはいけないからバスに乗れとのこと。僕たちは、バスに乗るために、ブリストルの中央駅である、テンプルミドウ駅まで歩いた。

 駅前に、「八番」と標識を付けたバスが停まっている。運転手に、

「サスペンション・ブリッジ(吊り橋)まで行きますか。」

と聞くと、行くから乗れとのこと。二人分で三ポンド十ペンスを払ってバスに乗る。バスは間もなく走り出し、少し行ったところで運転手が交代した。バスは、僕たちが歩いたコースとほぼ同じコースを逆向きに走り、大聖堂の前を通り、大学の前を通り、動物園の前を通り、ブリストル郊外を走っている。郊外には一度住んでみたいと思うような、なかなか立派な家が多い。

「何か変ですよね。こんなに遠いはずはないんだけど。」

三十分経ってもまだ吊り橋を通らない。僕は運転手に聞きに行く。

「吊り橋に行きたいんだけどどこまで乗ればいいの。」

「吊り橋、もうとっくの昔に過ぎちゃったよ。ここで降りて、九番のバスに乗るのがいい。」

ということで、僕と義母はバスを降りる。しかし、バス停らしいものは見つからず。自分たちがどこにいるのかも分からない。そんなときは人に尋ねるしかない。まず若者に聞き、次に乳母車を押した若いお母さんに聞く。ふたりとも親切に教えてくれる。ブリストルの住民は本当に親切。やっとのことで九番のバスの走っている通りに出た。

 運転手が途中で交代したことが不運だったようだ。最初の運転手は最低僕たちが吊り橋に行くことを知っている。最寄りの停留所でそう言ってくれていたはず。

「交替するときに、吊り橋へ行く観光客がいるってこと、ちゃんと次の運転手に引継ぎしてくれなあかんのにね。」

歩きながら、半分冗談で義母に言う。そこまで期待するのは無理と言うもの。

 バス停に到着、バスを待っているお婆さんに、「吊り橋」行きのバスがそこから出るか質問。老婆は、道路の向かい側のバス停から反対方向へのバスに乗るのだと教えてくれた。

「吊り橋、見る価値はあるからね。是非一度見た方がいいよ。」

と言ってくれる。期待が高まる。道路を渡る。間もなく九番のバスが来た。運転手に、

「吊り橋まで来たら教えてね。」

と念を押し、バスに乗り込む。十分ほど乗って、運転手に教えてられた場所で降りる。運転手に教えてもらった方角に歩いていくが橋らしいものはない。自転車に乗った青年にまた道を聞く。

「このままでも行けるけど、あっちの道から行ったほうが印象的な出会いになる。」

青年はそう言った。先ほどの老婆と言い、「思い入れ」のある道案内が面白い。

天気に誘われてアイスクリームがよく売れている。

 

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