タコを食べる国民

 

二ヶ国語表示の道路標識。文字の対応が良く分かる。

 

朝の涼しい空気の中、海岸沿いを村の教会まで散歩する。道路標識はギリシア文字と、アルファベットの二ヶ国語で書かれている。例えばカリヴィスだと「Kαλμβɛς」というギリシア文字の下に「Kalyves」というアルファベット表記が書かれている。これはなかなか有難い。三ヶ月前エジプトに行ったときは、道路標識の殆どがアラビア語で書かれており、参ってしまった。この二ヶ国語併記は、ギリシア文字と普通のアルファベットの関係を覚えるにも、誠に役に立つシステムだ。

ホテルに戻り、デジタルカメラで撮った写真をパソコンに落とす。昨夜自分で撮った写真を基に、村の教会の絵を描く。直接現地でスケッチした方が良いのだろうが、その時間も元気もない。先ず写真に撮っておいて、それから絵を描くほうが手っ取り早くて楽。自分で撮った写真なのだし、オリジナリティーに問題もないだろう。絵を描くと、対象物を良く観察する。全体の構造も分かるし、細かいところに新たな発見もある。数日後に道で出会ったヤギの絵を描いたが、その後、写真を見なくても、ヤギをスラスラ描けるようになった。目標は毎日一枚。二週間で十四枚の絵が出来れば、良い記念になると思う。早く描き上げるために、製図用のペンで輪郭を書き、パステルで色をつけていく。

絵を描きながら、昨日スーパーで買ってきた冷凍のタコを茹でる。頭がピンポン玉くらいの小さなタコが数匹。茹で上がると、あまりに美味しそうなので、持参した醤油をかけて朝食に食べる。英国では滅多にタコにお目にかかれない。イカは良く見るが。タコを食べるのは、世界中でもギリシア人と日本人だけかも知れない。

「美味しいよ。」

と言って、起きてきたスミレにも薦めてみる。お尻の穴中心に、足がクルンと外を向いているのを見て、

「ストレンジ(変な形)。」

と言っている。そう言いながらも、スミレはタコの足を一本、醤油に浸して食べている。

朝食の後、皆で外へ出て、プールと海で泳ぐ。昨日に続き、かなり風が強いが天気は最高、海の透明度も素晴らしい。近くのソウダの町にはNATO軍とギリシア海軍の軍港があるそうだ。灰色の軍艦が沖を通る。

日が昇るにつれ、海の青さはどんどんと増していく。二週間この海の色に囲まれて過ごすことになるが、何度見ても飽きない、何度見ても感嘆するような色だ。

昼前に、プールサイドで旅行会社の現地社員による説明会があった。この周辺で観光地や景色の良い場所を教えてくれる。明日からレンタカーを借りる手配をする。

昼に部屋に戻ると、スミレが背中を見て、

「二時間プールサイドにいただけなのに、もう水着の跡がついている。」

と驚いていた。日差しが強烈なのだ。気温は二十八度くらい。太陽の下は暑く感じるが、日陰に入ると涼しい。

 

タコを食べるポヨ子さん。

 

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