これが本当の核エネルギー

 

これから海岸に向かって三十八キロの道を走る。ゆっくり行こう。

 

食事が済んでから、海に飛び込む。歩いて火照った身体に、冷たい海の水が気持ちよい。石浜だったが、海の中には小さな魚が一杯いた。

午後二時過ぎにマイクロバスでソウギアを出発。持ってきた四リッターの水は既に飲み干していたので、新たに二リッターの水を買う。三十度の気温の中での運動。水の消費量が多い。

朝出発した風力発電の風車の前まで千メートル余り上り、そこから今度は北の方へ向かって走り出す。この頃には僕も大分自転車の走り方について学んでいた。まめにギアチェンジをすることにより楽に走れるのだが、苦しくなってからギアチェンジをしたのでは遅すぎる。前方を眺め、坂の具合を確かめ、そこに差し掛かるころには最適のギアをセットしておくのだ。これで、上り坂になっても、遅れなくなった。標高千メートルから海岸線まで走り降りるのだから、傾向としては下りなのだが、時々上りもある。マユミとスミレは道が上り坂になるたびに、「集団」に付くのに苦労している。

一時間ほど走り、途中から細い脇道に入る。一軒のタヴェルナの前で自転車を停め、休憩。オナシスが食堂の裏にある納屋に僕たちを案内する。そこには大きなステンレスのタンクがふたつ、小さい木の樽がいくつか置かれていた。天井にはツバメの巣があり、子ツバメがピーチク鳴いている。時々窓の隙間から親ツバメが風のように入ってきて、子ツバメに餌を与え、また風のように去っていく。オナシスは、大きなタンクにはオリーブ油が入っており、小さい樽にはワインが入っていると言った。彼はそれから、オリーブの収穫の仕方を、そこに置いてある用具を使って説明してくれた。

オリーブを絞った最後のカス、つまりオリーブの核、あるいは種は、乾燥させ燃料にするという。燃やすと悪臭を発するので、都市では禁じられているそうだが。そこの家にはその燃料がまだ使われていた。

「これが本当の核エネルギー。」

オナシスが澄ました顔で言った。おーい、彼に座布団一枚。

タヴェルナの玄関に座って涼を取る。食堂のご主人はオナシスの知り合いらしく、ハチミツ入りのラキを皆に振舞ってくれた。その店では、自家製のハチミツ、ワイン、ラキ、オリーブ油を売っている。ラキはワインの絞り粕から、アルコール分を蒸留してとるとのこと。メチャ安い。どれもラベルも何も貼っていない同じペットボトルに入っている。マユミがワインの試飲をさせてもらっている。僕も一口もらったが、ロゼのワインは梅酒のような味がした。マユミは、

「とっても安い。」

と言って、ハチミツ、オリーブ油、ワインを買っている。サイクリングの途中と言えども、マイクロバスが追いかけているので、買い物をしても平気、マイクロバスの中に放り込んで置けばよいのだから。

 

ワインの樽を前に説明をするオナシス。

 

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