三万人の中のふたり

 

ゴール間近のミランダ選手。まだ元気そう。

 

 バーベキューには、会社の同僚の若者ショージ、友人のサトシ・マキコ夫妻、同じく友人のノリコ・ヒロコ姉妹、それに我が家のいつものメンバー、妻のマユミと息子のワタルと末娘のスミレ、プラス最近我が家のメンバー化しつつある、息子のガールフレンド、ミランダ・ホッブス嬢が参加した。

 ショージとミランダは、奇しくも、二週間前の日曜日にあった「ロンドン十キロレース」に参加している。その日は晴れていたが、気温が低く、走りやすい日だった。息子はミランダに付き添い、マユミと僕は、テムズ河沿いのエンバンクメントで待っていた。後で知ったのだが、何と三万人の出場者があったらしい。次から次へと現れる三万人の中から、ショージとミランダのふたりを見つけ出すのは骨が折れた。まずショージを発見する。

「カモン・ショージ!ゴー、ゴー、ゴー!」

と声をかけると、向こうも気がついて手を振ってくれた。ミランダはその四十五分後に現れた。危うく見逃すところ、妻が何とか見つけてくれた。無事ふたりを発見し、声援することができたのでホッとする。

「疲れたぁ。」

家に戻って、妻も僕も同時に叫んだ。特に目が疲れていた。一時間半の間、ずっと現れては通り過ぎるランナーを凝視していたんだもの。でも、ふたりとも、僕らの応援を喜んでくれたみたいで、行った甲斐があったというもの。

 ショージとミランダは、「三万人の中のふたり」だったので、もちろん互いに顔を合わせていない。先ほども書いたが、ショージが通り過ぎてから、四十五分してミランダが通り過ぎたのだから。でも、その頃には先頭の黒人ランナーはとっくの昔にゴールインして、家に帰って風呂に入り、ビールでも飲みながら、テレビでレースの様子を見ていたかも知れない。

話が逸れた。ともかく、ショージは、僕以外のメンバーとは初対面なのだが、年齢が近いせいか、息子や娘、ミランダとの会話を楽しんでいるようだ。

 ショージは最近、英国国内旅行に凝っていて、最近は、コーンウォール(英国の左下に突き出た半島部)の「英国のモン・サン・ミッシェル」へ行ってきたという。元祖「モン・サン・ミッシェル」はご存知の方も多いと思うが、フランスのブルターニュ地方にある、海に浮かぶ島に建てられた教会。なかなか美しい場所だ。「英国のモン・サン・ミッシェル」はペンザンスの近くにあるという。そこへ行くとき、「おそ松くん」のイヤミ先生なら、

「ミーはペンザンスへ行くざんす。」

と言うのだろうか、などとどうでもよいことを考えてしまう。

 予想通り、バーベキューの途中で雨になった。しかし、新兵器のガラス屋根のおかげで、僕たちは夜遅くまで、外で飲み食い、話をすることができた。

 

走り終わり、ゴールで応援団と記念撮影。

 

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