カイロの交通機関

客を待つマイクロバス。満員になってから発車する。

 

「兵士諸君、ピラミッドの頂から、四千年の歴史が諸君を見つめている。」

エジプト遠征の際、ナポレオンが兵士たち語った言葉だという。僕たちは三時間余りをピラミッドの周辺で、四千年の歴史と一緒に過ごした。

 昼過ぎに「マイクロバス」でカイロ市街に向かう。ここで、カイロの交通機関について、少し述べておこう。主なものは、地下鉄、バス、マイクロバス、タクシーだ。

@ 地下鉄:市街と近郊を結ぶ線が二本ある。一九八七年に最初の路線が開通したとのこと。車両も駅もなかなか清潔だ。表示も英語とアラビア語の両方で書かれており利用しやすい。一回一ポンド(十七円)という値段も嬉しい。四号車が女性専用車両だ。しかし、乗っている人たちは何故か悲しい目をしている。

A バス:日本のバスより小さめ。薄緑の塗装、京都の市バスとよく似た色。ドアは開けっ放し。そこに車掌のお兄ちゃんがぶら下がり、行き先を叫んでいる。一回、一ポンド二十五ピアストル。行き先の表示はないようだ。

B マイクロバス:と言うより、十人乗りくらいのワンボックスカー。運転手の個人営業だと思われる。これが一番一般的に利用されているのではないだろうか。一回七十五ピアストル。行き先表示は一切なし。要所要所で運転手が行き先を叫んでいるのを聞くか、一度停めて行き先を運転手に確認する必要がある。お金は後ろの客から前の客へと順々に回していく。おつりもお客の中で調整されてしまい、運転手には正確な金額が渡るという不思議なシステム。 

C タクシー:黒と白の一見日本のパトカー風に塗られている。大抵は使い込んであり、ボコボコの車体。メーターはない。近所なら大体五ポンドから十ポンドで言ってくれる。四人で乗って五ポンド(九十円)なら安い。遠距離になると、料金は客と運転手の交渉で決まる。大抵の運転手は英語やフランス語を解さないので、旅行者には辛いところ。

 ユキはバスとマイクロバスをよく利用しているとのこと。しかし、カイロ市街は、交通渋滞がひどいので、同じ距離をあるときは三十分、あるときは二時間近くかかることがあるという。

 しかし、バスにもマイクロバスにも行き先が書いてなくて、いちいち運転手や車掌に聞かなければならないのはいかにも面倒臭い。どうしてなのと、地元民のユキに尋ねる。

「エジプトは識字率が低いので、行き先を書いても読めない人が多い。したがって、かなりの人が行き先を運転手に尋ねなければいけない。どうせ行き先を尋ねられるならば、書いても無駄だってことなんでしょうね。」

彼はそう答えた。

 驚くほどの低料金、マイクロバスの集金システムなど、旅行者からは金は取るが、一緒に暮らしている者同士は助け合って生きていこうという姿勢が感じられる。定着してしまえば、意外と暮らしやすい場所なのではないかと思われる。

カイロの地下鉄。アラビア語と英語の両方の表示があるので、本当に助かる。

 

<次へ> <戻る>