旅のストレス

悪名高いヒースロー第五ターミナルからデュッセルドルフに向かう。

 

 前章で、旅のストレスその一は、生活のリズムが崩れることであると書いた。旅のストレスの原因はもうひとつある。それは、交通機関によるストレスである。特に、空港でのストレスがひどい。

ヨーロッパ内の移動は、大抵飛行機が利用される。この文明の進んだ、ありとあらゆるものがスピード化した世の中で、空港のシステムだけは、何故、あれほど非合理的、前近代的なのであろうか。そもそも、ロンドンからデュッセルドルフの一時間の飛行に対して、空港で要する時間の方が長いのが理不尽である。鉄道、バス等、他の公共交通機関で、「出発の二時間前に乗り場に来い」などという馬鹿なことを言うものがあるかと言いたい。列車なら、五分前に駅についてもオーケーなのに。また、飛行機と言うのは何故あれほど簡単に遅れるものだろう。三十分、一時間遅れて、平気な顔をしている。それを、航空会社も、空港管理会社も、当然なものとして受け止めているところが不思議である。ええかげんせえ、責任者出て来い!と僕は言いたい。(ボヤキ漫才風。)

四月十四日、月曜日。僕はヒースロー空港七時二十五分の、BA(ブリティッシュ・エアウェイズ)のデュッセルドルフ行きに乗ることになっていた。五時半に家を出て、六時に車を会社に置き、そこから空港バスで十五分、バスターミナルまで行く。ここまでは予定通り。そこで、僕は飛行機の出発がターミナル・ファイブであることを知った。

どうもいやな予感がする。第五ターミナルは、今年三月二十七日にオープン。BAの国内便とヨーロッパ便がこのターミナルを使用することになったが、初日から全てが機能せず、荷物は積み残されるは、飛行機は大幅に遅れるは、キャンセルされるはで、大混乱であるというニュースが連日報道されていた。

僕の仕事でも、新しい倉庫を稼動させることがたまにあるが、どんなに周到に準備して、予行演習をしても、予期せぬ事態が起こり、最初は混乱がつきものである。しかし、このターミナルの混乱振りはひどい。あきらかに、準備不足、機材や人員の予行演習不足としか思えないのである。

予感は的中。先ず、バスターミナルから第五ターミナルまでのアクセスが滅茶苦茶悪いことが判明する。電車が通っているのであるが、散々歩いてやっと電車の乗り場にたどり着いたら、電車は十五分に一本。そこで十分以上待ち、五分間電車に乗って、第五ターミナルに着いたときには、出発時間まで三十分を切っていた。自動搭乗券発行機から搭乗券が出てきたときにはホッとした。朝からドッと疲れてしまう。これぞ、旅のストレス・ナンバー・ツー。

今日は、僕の方が遅れそうになったわけであるが、これはごく稀なケースで、飛行機が遅れる方が圧倒的に多い。とにかく、飛行機を利用するときは本が欠かせない。面白い本でも読んでいないと、イライラしてストレスの塊になってしまう。ともかく、僕は飛行機に間に合い、ロンドンからデュッセルドルフへ向かった。本を読みながら。

 

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