再びカリフォルニアの青い空

 

 ロサンゼルス滞在六日目で最終日、ロンドン行きの飛行機は午後八時半。昼間はまだ十分に時間がある。それで、また出勤するY子さんに同乗させてもらい、街中に出た。今日はハリウッド方面へ言ってみようという計画である。

 地下鉄に乗り「ハリウッド・ハイランド」駅で降りる。地上に上がると、岩山の中腹に例の「HOLLYWOOD」という白いサインが見える。「マン・チャイニーズ・シアター」が駅の隣にある。アメリカ映画に出てくるキッチュなエセ東洋趣味そのままの建物である。玄関の広場に歴代映画スターの手形足型がある。ミュージカルの好きな末娘のために「ジュリー・アンドリュース」等ミュージカル俳優の手形足型を見つくろってカメラに収めた。

 時間はまだまだあるので、もう一駅地下鉄に乗って「ユニバーサル・スタジオ」に行く。最近大阪にできたやつの本家である。四十ドルくらい払って中へ入る。平日のため、園内は空いており、どのアトラクションにも待たずに入れるから、短時間で回るには好都合である。「ジュラシック・パーク」というやつは、ボートで恐竜の森を回るのであるが、最後にボートがジェットコースターのように水の中に突入し、しぶきで乗っている客もずぶ濡れになってしまうという、凄まじいものであった。日本でこんなことをやったら、後で風邪を引いたとか問題になるだろうが、ここは一年中太陽の照るカリフォルニア。外に出て十五分もすると、濡れたTシャツはすっかり乾いていた。しかし、どれも子供だましのような気がして(遊園地なので仕方がないけれど)、基本的に商業目的で作られた観光地の嫌いな私は二時間くらいで外に出た。

 夕方仕事の終わったY子さんに空港まで送ってもらう。高速道路から夕焼けが見える。ロンドンの夕焼けはオレンジっぽい色だが、ロサンゼルスの夕焼けはもっと赤い色が濃いように思えた。ひょろ長い椰子の木が夕焼けに映えている。

「夕焼けがきれい。」

と言おうとした瞬間、

「きれいな夕焼けね。」

Y子さんに先を越された。そう言えば、今回Y子さんと一緒にいるとき、私が思ったこと、言おうとしたことを、彼女に言い当てられたり、先を越されたりすることが多かった。同級生と言うのは、二十数年たっても思考パターンが同じなのか、それとも彼女が読心術に長けているのか。

 空港で六日間お世話になったY子さんと別れた。機上の人となり、時差の関係で翌日の夕方ロンドンに戻り、翌日からまた仕事に戻った。

 仕事場の窓から外を見る。今日もロンドンは曇り空である。きっと今日も何回か雨が降るだろう。帰国してから数日、カリフォルニアの青い空が何回も頭の中を横切った。夢の中で見た非現実的な風景のように。                   (了)