フライドチキンと鶏の唐揚げ

未来を感じさせる、なかなか印象的なプロフィールだった。

 

結局、僕は実際に飛んでいるコンコルドには乗れなかった。そして、今こうして、飛ばなくなった、いや飛べなくなったコンコルドの中に居る。残念な気がするが、まあ、ひとつ話の種ができたということで、納得しておこう。世の中、「ベスト」だけではなく「ベター」で満足しなくてはいけないときもある。

また、出張中、仕事の他に、例え一時間でも、ひとつでも業務以外に何かできたことは、ラッキーと思わねばならない。出張先で、ホテル、空港、職場以外にどこも行けないのが普通なのだ。

座席やトイレ、コックピットなどを写真に撮る。通路が狭いので、すれ違うのが大変だ。写真を撮るのも順番待ち。操縦席には、ふたりのパイロットの後方右側に航空機関士の席がある。そう言えば昔の飛行機は、パイロット三人体制だった。

僕はタラップを降りた。建物を出て、駐車場に向かう。きっかり一時間パークで過ごした後、高速道路に乗りロンドンへ向かった。昼食にはパークの屋台でフライドチキンと揚げ芋を食べた。いつも野菜中心の健康的な食事をしているんだし、たまにはジャンクフードもいいか。

金曜日の午後で道が混んでいた。別段事故があった訳ではないのだが、通行量が飽和状態になった感じで何度も停まった。特にバーミンガム周辺の渋滞がひどい。ここは高速道路が複雑に交差していて、「スパゲッティー・ジャンクション」と呼ばれている場所。つまり、スパゲティーのように、道路が、縦横上下に絡み合っているのだ。

やっとバーミンガム付近の渋滞を抜け出し、M一に入ったと思ったら、ノースハンプトン付近で豪雨にも見舞われる。またノロノロ運転。結局四時間半かかってロンドンに到着。高速道路が終りになり、下道に入った。

ロンドンも雨だった。会社の駐車場にトヨタを停める。オフィスに顔を出し、上司のアンディに無事「使命」を果たしたことを報告。自分の車を取って帰宅する。

家に帰ってコンコルドの「搭乗券」を妻と末娘のスミレに見せる。もうひとりの娘、ミドリにも後でメールで連絡しようと思う。昼にフライドチキンを食べたその日の夕食は、鶏の唐揚げだった。

 

 

わずか二日間の出張で、別段何もしていないのに、また旅行記を書いてしまった。今回はコンコルドにまつわる手記だということでご理解願いたい。行き先はマンチェスターとなっているが、厳密に言うと、手前の「マンチェスター空港」で引き返しているので、「マンチェスター市」へは行っていないのだ。改めて訪れる機会があることを祈る。

(了)

 

これが本当の「搭乗券」だったらいいのに。

 

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