ナンバープレート

 

 日本で、格好のいい車のナンバーと、そうでないやつがあると聞いたことがある。「品川」「横浜」ナンバーは格好がよく、「足立」「習志野」はよくないとか。「なにわ」はガラが悪いとか。ドイツのナンバープレートにも、先頭に車が登録されている土地のイニシャルが書かれている。大都市は一文字、中都市は二文字、小都市や群部は三文字である。車にこだわるドイツ人にとって、それぞれにステータスがあるみたいで、でも住んでいる地域によって決まってしまう、自分の力ではどうしようもないことなので、よく酒の上で、自慢や揶揄の対象となっている。

 一文字で大都市と認定されているのは「K」のケルン、「F」のフランクフルト、「D」のデュッセルドルフ、「B」のベルリン、「M」のミュンヘン等。昔少し働いていたヴッペルタールは中規模の年であるが「W」で始まる競争相手に恵まれて「W」一字であった。また、ラーン郡は、田舎であるにもかかわらず「L」一文字の特典に恵まれていたが、東西統一後、ライプツィヒという東の強敵に蹴落とされて三文字に落ちぶれていった。

 私が長く住んでいたマーブルクは中規模都市の例に漏れず「MR」の二文字。私もずっと「MR」ナンバーの車に乗っていた。当時の会社の営業所がオッフェンバッハにあったので営業車のナンバーは「OF」、倉庫はフィアゼンというオランダ国境の小さな町にあったので、そこの車は「VIE」で始まるナンバーであった。

 昔から「オッフェンバッハのドライバーは運転が荒い」「高速道路で『OF』ナンバーの車に出会ったら気をつけろ」という妙な「伝説」がドイツにある。誰かが、「OF」は「オーネ・フューラーシャイン」(運転免許なし)の略だと言い出して、笑ったことがある。

 思い込みというのは恐ろしい。「VIE」は、先程も述べたオランダ国境の小さな町のナンバーであるが、会社で見慣れているので結構印象に残っていた。現在の会社で、コンピューターで航空貨物のシステムを担当している時、行き先に「VIE」がやたらと出てくる。私はそれをフィアゼンという例の小都市だと思い込み、あんな小さな町にも空港があり、結構たくさんの飛行機が飛んでいるんだな。きっと、大きな会社があるんだ。と思っていた。後で知ったのだが、「VIE」は実のところ、「VIENNA」つまり「ウィーン」のことであった。ドイツ語では「WIEN」と綴り「W」で始まるので、「V」からウィーンは想像できなかったのだ。これも、私の同僚の間では笑い話となっている。

 私のお気に入りのナンバーは南部の保養地バーデンバーデンのもの。「BAD」の三文字である。英語では「悪い」という意味だが、ドイツ語でBadは「お風呂」。風呂好きの私にとっても好ましいナンバーなのである。

 ちなみに英国のナンバーの一桁目は、最初の登録年度を表し。地域に関係がないので、上記のような会話とは無縁である。しかし、車の古い新しいがすぐにばれてしまうので、揶揄などで終わらない、もっと直接的な会話にのめりこんでいくのであった。