祖母よりの手紙

 

時々川を渡りながら、ジャングルの中を進む。

 

ここまで連載を続けて、初めて読者よりお手紙をいただいた。スミレの祖母、僕の母からである。紹介することにする。

 

 今回、スミレさんによって書かれ、お父さんによって訳された「ソロモン手記」を楽しく読ませていただいています。心理描写が素晴らしかったし、辺りの景色が手に取るように伝わってきました。ありがとう。

 ふと、こんなことを考えました。

 スミレさんが島でジャングルの中の道を、リュックを背負って歩いている。もちろんガイドして下さる方がご一緒だけど。しかし、その道は昔ジャングルの一部だったのでしょうね。いろいろな人たちがそこを通り続けるうちに(もしかしたら動物たちが通るうちに)自然に道が出来てきたのでしょう。そして、もしそこを誰も通らなくなったら、道はまたすぐに草で覆われ、道ではなくなってしまうでしょう。

 そんなことを思ったのには理由があります。今回、スミレさんのお父さんを始め、何人もの方たちが、スミレさんがソロモン諸島のひとつの村に行けるように「道」を作ってくださいました。もちろん、それは最初にスミレさんが「そこへ行こう」と思ったからです。たったひとりで、若い女の子が文化の匂いの少ないところへ行くことは大きな冒険ですね。わたしはその精神は素晴らしいと思います。「未知のところへ出かけていこう」というその思いは、今回スミレさんが自身の中に作った「道」です。積極的で意欲的な思いをこれからもずっと持ち続けて、その「道」がまた草で覆われてしまわないようにと願っています。

 スミレさんがベティヴァツの村を「パラダイス」のようだと観られたことが、私の心の琴線に触れました。やっぱり!!人は始めから自然の中で一番安心できるんだわ。いかに便利な品に囲まれていても、人間本来の望みは美しい自然の中で過ごすことなのでしょうね。「神が人間を形創り、エデンの園に住まわせた」記憶が、きっと人間のどこかに残っているのでしょう。

 写真の中で、うらやましいなと思ったのは、村人に囲まれてフルートを吹いているところです。音楽は人類共通のコミュニケーションの手段です。一本の、魔法の杖のような楽器を持ち歩き、その場面に合った曲が演奏できるなんて、素晴らしい。私も、そんな場に出会いたいと思います。その能力は賜物ですよ。

 最初の「道」の話に戻りますが、何をするにしても、スミレさんの周囲には援助者がおられることは幸せです。(きっとこれからもいろいろと)「当然ではない」ことを経験することのできる幸せ、自分の周囲に張り巡らされた、「縁」、」「運」の根により、若い生命を謳歌できることの幸せを、考えてみることが大切ではないでしょうか。

 

お話の続きを期待しています。愛読者のひとりである、京都の祖母より。

 

人や動物が歩くことにより道はできる。

 

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