新婚さんのメッカ

 

ちょっとイタリアのアッシジに似た感じのピルゴスの村。

 

朝マユミとふたりで海岸を散歩する。海岸から離れて、田舎道をトボトボ歩いているのも良いものである。そのときマユミが言ったのだが、

「スペインの南海岸のリゾート、例えば、コスタ・デル・ソルなどは、高層アパートやホテルが立ち並んでいる。それに比べてギリシアは建物がせいぜい三階建て。建物が低いと気分が落ち着くわね。」

確かに、二年前にスペインの南海岸コスタ・ブランカに行ったときも、借りたアパートメントは十二階建ての十階だった。見晴らしは良かったが、そんな建物が立ち並んでいると、常に威圧感を受け、何となく落ち着かなかった。現在僕たちが今泊まっているアパートは二階建て。「マンマ・ミーア」の映画で、ドナが経営していたホテルみたいな感じで、くつろげる雰囲気である。そう言えば、クレタ島にもあまり高い建物はなかった。ギリシアに高い建物がないのは、地震があるせいだろうか。それとも「景観条例」などというものがあるのだろうか。

アパートに戻り、昨日刺身を作った後のアラで、魚のスープを作り、そこに飯を入れて朝食に食べる。朝から温かいスープが美味しい。

十時ごろにアパートを出て、車でピルゴスという村に向かう。この村は二日目にバスで「首都」フィラに向かうとき、途中立ち寄り、なかなか良い印象だったので、今日行ってみることにしたのである。アパートのあるペリヴォロスの村からは二十分くらい。

結構有名な観光地らしく、村の入り口には観光バスが数台停まっている。村は丘に張り付くように立っており、建物は皆白く、窓枠が青い。また教会の青い丸屋根や、鐘楼があちこちに見える。妻の持っているガイドによると、この小さな村に、四十五の教会があるそうである。雰囲気としては、イタリアのアッシジに似ている。アッシジは町全体がハチミツ色で統一されているが、このピルゴスの村は白と青である。

車を置いて、村の坂道を登っていく。道は狭い。幅一メートルくらい。まるで迷路だ。しかし、その迷路の中を歩いていくのは何となく「開けてビックリ」という期待感があって楽しい。村の一番高いところはヴェネチア時代の城砦の跡。城砦が造られたくらいなので、当然のことながら、見晴らしは最高。三百六十度の眺望だ。昨日訪れた灯台から、フィラの町、夕日で有名なイアの町、火山島、飛行場、僕たちのいるペリヴォロスまで、島の全てが見渡せる。少し暑い日だったが、てっぺんは風が吹き渡り涼しい。

城砦から村の中へ降りていくと、教会の前で薄い黄色の裾の広がった「王様と私」風のドレスを着て立っている東洋人の女性が。ハネムーンでこちらを訪れ、これから記念撮影をするのだという。サントリーニ島が新婚旅行のメッカであると聞いたことがある。旦那の姿は見えない。なかなか微笑ましい光景だったので、妻と一緒に写真に入ってもらい、

「お幸せに。」

と言って別れる。

 

新婚さんと一緒に教会の前で記念撮影。

 

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