トラッキーに会った

 

 今回は父の見舞いを理由に帰省したのだが、独り旅という気楽さもあって、随分と遊び歩いた。母が「そんなに出歩いてよく身体が持つね」と言うくらい。しかし、父との時間も大切だと思ったので、夕方は早めに実家に戻り、夕食だけは父母と一緒にとるようにしていた。

 福岡から帰った翌日、阪神・オリックスのオープン戦を見に大阪ドームに出かけた。朝から激しい雨。しかし、ドーム球場は天気を気にしないで出かけられるので嬉しい。まだ鼻水が出るが、幸い寒気は余りしなくなった。風邪がこのまま治ってくれると良いのだが。

 僕は阪神ファンだ。それも、かなり熱心な。二〇〇三年、タイガースが久々に優勝したときには、ロンドンでトラキチを集めて、トラファルガー広場で「六甲おろし」を歌う集いを主催したくらい。その時は、星野監督の代わりに胴上げまでされてしまった。

 実家から少し歩いて地下鉄に乗り、京都から新快速で大阪まで行く。地下鉄の駅で、横に二十五歳前後の、可愛いお姉さんが待っていた。年配の男性がそこに現れて、何やら話をしている。どうやら、夜勤明けの看護婦さんと、患者さんのようだ。それも、僕の父の通っている病院の看護婦さんらしい。病気になるのは嫌だが、こんな綺麗な人に会えるなら、一度病院に行くのも悪くないかなと、不謹慎なことを考えてしまう。折から卒業式のシーズン。地下鉄や新快速の中で、振袖姿や袴姿の若い女性が目を楽しませてくれる。

大阪から環状線で大正駅へ。その前が大阪ドーム。何度も前を通ったことがあるが、入るのは初めてだ。十三時の試合開始の一時間前に到着、内野自由席二千円という切符を買う。その日、阪神は三塁側のベンチなので、三塁側に向かった。大阪ドームは、フェンスや、球状全体がライトブルーで統一されており、なかなか綺麗。観客席の傾斜がきつく、グラウンドが見辛いという噂を聞いていたが、それほどでもない。一昨年はシカゴとミルウォーキーで、昨年はロサンゼルスで野球を見たが、日本で野球を見るのは本当に久しぶりだ。アメリカの野球場はバックネットを除いてグラウンドと観客席の間にネットがないが、日本の球場は、内野席の前にも金網が張ってあり、それが邪魔。

 グラウンドでは、オリックスの選手が打撃練習をしていた。ファウルボールが観客席に飛び込みそうになると、係員が一斉に「ピーッ」と笛を吹く。最初はびっくりした。その後に「ファウルボールにはくれぐれもご注意くださいませ」と放送が入るのだが、飛び込んだ後で言っても、遅すぎるって。

 オリックスの打撃練習が終わって、阪神の選手がグラウンドに現れ、肩慣らしを始めた。「おっ、今岡くんだ」「おっ、フジモンだ」「おっ、鳥谷だ」「おおっ、矢野さん」「うわー、赤星」。テレビやヴィデオでしか見たことのないが、僕にとっては皆お馴染みの顔だ。初めて会った人たちなのに、何だが、懐かしい感じがする。それと、マスコットの「トラッキー」にも会った。トラッキーは最前列でお弁当を食べてるおっちゃんがいると、もの欲しそうな顔で覗き込むなど、とてもお茶目だった。

 

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