地獄八景亡者戯聞き比べ − 冥土のエンターテインメント(寄席編)

 

(お笑い)

 芝居と同じく、冥土では寄席も大変人気があります。歴代の名人が揃っていますから。

先ず落語、東京の方では、三遊亭円朝「牡丹灯篭」の通し読み。古今亭志生、志朝親子会。関西の方でも負けじと、初代と二代目、桂春団次の親子会です。その他、関西勢は笑福亭松鶴、米団治、文団治と言う、懐かしい面々が揃っています。看板を見ると、その隣に「桂文珍」の名も。

「あれっ、桂文珍という名で死んだ落語家はいないはず。良う見てみなはれ、肩の所に『近日来演』と書いてありまっせ。そんなこと知らんと、あいつ、今頃ナンバで喋ってまっせ。アホやなあ。」

これ、自分のことを言うとギャグになります。しかし、文我が、自分の師匠の枝雀を「近日来演」とやってしまいました。事実、枝雀はその後間もなく亡くなります。これではシャレになりません。おそらく、文我も、そのことを後で後悔をしていたと思います。文我は、枝雀が元気になったので、その看板が取り払われ、代わりに「桂ざこば」と「立川談志」の名前が掛かったと言います。

「ざこばさん、談志さん、ご病気ですか。」

「いいえ、彼らは他殺説です。」

毒舌のご両人ならさもありなん。これには笑いました。

 

次は漫才です。こちらも名人揃い。雁玉十郎(どなたかご存知ですか)、ワカナ・一郎、エンタツ・アチャコ、ダイマル・ラケット。ダイマル・ラケットが得意ネタ、「僕は幽霊」で「青火がボー、ボヤがボー」と言っていた姿を思い出します。彼らはふたりとも本当にこの世のものではなくなってしまいました。

 枝雀のアイデアで、死ぬほど笑ったのは、親鸞・法然というコンビ。それと松鶴家キリストと浮世亭マホメッドの論争漫才です。「アラー、アーメン、アラー、アーメン。」しかし、厳密に言いますと、「アーメン」と言う祈りの言葉は「コーラン」の中にも出てきて、キリスト教独特のものではありません。

 

(歌謡曲)

 寄席ではありませんが、冥土では歌謡曲も盛んです。美空ひばりは冥土でも圧倒的な人気で、リサイタルにはいつも満員です。大晦日恒例の「黒白歌合戦」ではトリを取っています。「三途川の流れのように」、「真赤な血の池」というヒットも出たそうです。

 しかし、美空ひばりのような「新人」がすぐに活躍するのは、ここでも難しいようです。ヴェテランが頑張っておりますから。小野小町の「越天楽ブルース」。その他、真田十勇士の面々はSMAP並みに、個人でも活躍しておられます。霧隠才蔵は「夜霧よ今夜もありがとう」、猿飛佐助は「お猿のかご屋」、三好清海入道は「清海はふたりのために」、御大将真田幸村は「テネシー・ワルツ」。「真田幸村(雪村)いずみ」という苦しいシャレよりも、「これもうひとつでしたね」と言う、枝雀の照れ隠しの言葉に、むしろ私は笑ってしまいました。

 

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