「ルネッサンス」

 

      

ニコラウス・コペルニクス / ヨハネス・ケプラー / ガリレオ・ガリレイ / アイザック・ニュートン

 

 十四世紀になり、哲学と科学はキリスト教の呪縛から、ようやく解き放たれる。ルネッサンスは「再生」を意味し、「古代(ギリシア)文化、芸術への回帰」を目指すものである。ルネッサンスの動きは、十四世紀、北イタリアで始まり、全ヨーロッパに広まった。同時期に、宗教改革の動きも始まり、ヨーロッパは長い中世から脱して、大きな転機を迎える。

 そのふたつの動きに重要な役割を果たした発明が三つある。羅針盤、火薬、活版印刷術である。羅針盤により、ヨーロッパ人は長距離を航海できるようになり、その活動範囲は飛躍的に広がった。また火薬により、ヨーロッパはアジア、アメリカに対して、軍事的に圧倒時な優位に立つことができた。そして、活版印刷術により、新しい思想がより多くの人間に伝わるようになった。その他、望遠鏡の発明も、天文学だけではなく、自然科学全体の発展に大きな役割を果たした。

ルネッサンスの時代、商業、貿易の発達により、富を蓄えた都市の市民階級が台頭し始める。そして、彼らは封建主義、キリスト教から脱却し、自由な考えを持とうとする人々であった。彼らの中に、「人間賛美」、人間とは罪深いものではなく、素晴らしいものなのだという考えが育まれた。それは「神」から「人間」への回帰と言える。同時に人間についてもっと知ろうという欲求も高まった。解剖学の発達は、単に医学だけではなく、美術、芸術の分野にも影響を与え、それまでタブーであった裸体の絵画、彫刻が好まれるようになる。それらの新たな発展は、建築、文学、音楽の分野においても広まっていった。

しかし、ルネッサンスの時代は良いことばかりではない。「世界は無限である」と唱えた最初のヒューマニストの一人、ジョルダーノ・ブルーノ(Giordano Bruno 15481600は火あぶりの刑に処せられた。また魔女狩りもこの時代にさかんに行われた。

しかし、この時代にひとつの新たな方法論が確立されつつあった。それは自然科学に対する、観察、実験による実証的な取り組みである。ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei 15641642はその実証的手法の先駆者であろう。フランシス・ベーコン(Francis Bacon 15611626は「知は力なり」と述べ。自然を探求し、より良く知ることが、自然を支配することにつながると論じている。

このルネッサンス期、最大の発見は、ポーランド人の天文学者ニコウラス・コペルニクス(Nicolaus Copernicus 14731543が唱えた地動説であろう。ドイツ人のヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler 15711630は、コペルニクスの理論を更に発展させ、惑星は全て太陽の周りを各々別の軌道で回っていると述べた。また前述のガリレイは「慣性」を発見、電車の中で、リンゴを投げ上げると、あたかも元の場所に戻ってくるように見えることに対しての説明をつけた。

しかし、最終的に、天体の運行の原理を解明したのが、アイザック・ニュートン(Isaac Newton 16421727である。彼は万有引力の法則を発見し、全てのものにはお互い引き合う力があると述べた。月が地球の周りを回り続けるのは、遠心力と地球の引力がつり合っているからである。そして、その法則が宇宙全体に通用することを証明した。

それまで人類が世界の中心であるとの考え方から、人類は大きな宇宙の中のひとつの惑星にたまたま住んでいるちっぽけな存在に過ぎないと考えた方は、後のダーウィンの進化論と同じくらい、キリスト教会の権威を揺るがすものであり、教会側からの大反対と弾圧を受けることになる。しかし、ニュートン自身は熱心なキリスト教徒であり、彼は自分の発見した法則が、神の存在を証明する一助となると考えていた。

しかし、ここでこれまでと異なる、新たな「神」のイメージが出来上がってきたのも確かである。神はもっと個人的なものである、キリスト教会という組織を通じてではなく、ひとりひとりが独自に神に近づけるのではないかという考えが生まれた。おりしも、聖書の各国語への翻訳が出始め、聖書はもはやカトリック教会の専売特許ではなくなった。このような土台の上に宗教改革が生まれる。

宗教改革というと、マルティン・ルター(Martin Luther 1483 – 1546)が有名であるが、エラスムス・フォン・ロッテルダム(Desiderius Erasmus 1467?−1536のように、カトリック教会の中からも改革者が現れた。ルターの目標は、キリスト教を成立時の姿に戻すことであった。そこには教会はまだなく、神と個人との関係のみが存在したのである。彼はまた、聖書の最初のドイツ語訳に成功する。これは後の統一ドイツ語の基礎となった。

 

   

マルティン・ルター / デジデリウス・エラスムス

 

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