鉄道マニアはカメラマニア

 

鉄道博物館、二階のテラスより一階を見渡す。

 

 東京で「ひかり」を降り、東北新幹線の「なすの」郡山行きに乗り換え、二十五分ほどで大宮に着く。大宮駅で「ニューシャトル」なる「ドックランド・ライト・レール」風の電車に乗り一駅。そこに鉄道博物館があった。千円の入場料を払い中に入る。春休みということで子供連れが多く、中は結構混んでいた。

二階のテラスから展示してある車両を見渡す。真ん中に転車台があって、C五十七蒸気機関車が乗っている、それを取り囲むように各種の車両が展示されていた。

僕にとっては、なかなかノスタルジックな世界であった。それらの車両が活躍していた時をまさに共に体験しているからだ。例えば、赤とクリーム色に塗られた、ボンネット付「こだま」型の車両。新幹線開業前、最初の電車特急「こだま」がまだこの車両で走っているとき、伊豆へ家族旅行にでかけるため、沼津まで乗ったことがある。また、金沢と京都を往復した「雷鳥」も、最初はこのボンネット型の車両であった。

寝台特急「あさかぜ」の先頭車があった。寝台特急、いわゆる「ブルートレイン」は見るのも、乗るのも好きだった。「実際自分が乗ったことがある。」この点が、ヨークの英国国立鉄道博物館を訪れたときの印象との最大の違いであろう。また、古いもの、新しいもののバランスもこちらの方に軍配が上がると思った。

「鉄道について学ぼう」コーナーは大人にも為になる。「分散式」(電車方式)と「集中式」(機関車方式)の各々の利点、「交流」、「直流」の各々の利点など、学ぶところも多かった。中庭に、ミニ電車が走っていたが、子供連れの列が長く、とても乗る気にならない。

写真を撮っていたが、そのうち、自分を入れた写真を撮りたくなった。誰かにシャッターを押してもらうことになるのだが、これがいつも頭痛の種。他人に頼むと、足首が欠けたり、塔の先が欠けたり、なかなか思った構図に撮ってくれないからである。そうだ、自分とよく似た一眼レフを持っている人に頼めばよいのでは、と思いつく。そして、そんな人を捜すのには全然事欠かなかった。

「すみません。シャッター押していただけますか。」

特急「とき」の前で、大きなカメラケースを肩にかけた三十台の男性に頼んでみる。

「いいっすよ。おっ、おたくは『ニコンのD四〇』ですか。」

彼は僕のカメラを手にとって言った。(知らんがな、放っといてんか。)

「車両を全部入れます? フラッシュを焚きます?

など質問してくる。そして、撮ってもらったのが下の写真である。まあ、なかなかよく取れている。僕はこの作戦で行くことにし、高級カメラをぶらさげているお兄ちゃんを見つけては、シャッターを押すのを頼んでみる。この作戦は成功し、博物館で撮ってもらった写真は皆良く撮れていた。しかし、皆、良いカメラを持っているのには感心する。鉄道マニアはカメラマニアであるということを改めて認識した次第。 

特急「とき」(クハ481)の前で。

 

<次へ> <戻る>