地獄八景亡者戯聞き比べ − 念仏ショッピング(一)

 

 六道の辻には人通りが絶えません。有名な歌手のリサイタル、野球の試合がある時などは、特に混雑します。文珍によりますと、冥土でも野球は盛んで、「半死にタイガース」対「鬼売りジャイアンツ」の伝統に一戦は特に人気を集めているとのことです。金に飽かせて選手を集める「鬼売りジャイアンツ」に対して、「半死にタイガース」は「彼岸の中日ドラゴンズ」より監督を迎え、体質改善を図っているとのこと。多分エースは村山、四番は藤村なのでしょうね。文珍の公演が二〇〇二年。その翌年、「半死にタイガース」が十八年ぶりに優勝するなんて、そのときは、「お釈迦様でも気がつかなかった」でしょうね。

 

 常に賑やかで人通りの多いのが念仏町です。

客:「念仏町てなんでんねん。」

観光案内所職員:「念仏売ってまんのやがな。」

客:「念仏みたいなん買うて、何しまんねん。」

職員:「あんた、何にも知らんのやな。これは肝心だっせ。良えお念仏を買うて、閻魔はんの前でお裁きを受けるときに、それを身に着けて行ったら、その念仏の功徳で少々の罪なら軽なったり、消えてしもうたりする。まあ、娑婆の裁判で弁護士を雇うようなもんでんなあ。地獄の沙汰も金次第とはこのことでんなあ。」

そして、この念仏、宗旨宗旨によって、売っている店も違います。以下がその一覧表です。見つけ方も書いておきます。

 

 浄土宗、浄土真宗:「南無阿弥陀仏屋」(本願寺のような大きな屋根が目印。)

 法華宗:「南無妙法蓮華経屋」(ひげでピンピーンと跳ねたような看板が目印。)

 真言宗:「おんあぼきゃべろしゃのまかぼだらまにはんどまじんばらはらはりた屋」(古い建物。)

 天理教:「悪しきを払うて助けたまえ天理王のみこと屋」(ハッピを来た人が表を掃除しているのが目印。)

 キリスト教:「アーメン商会」(唯一洋館建なのですぐにわかります。カトリックとプロテスタントでは課が違いますので、注意してください。)

 PL教団:花火が目印。

 モルモン教:分からないときは、自転車で「ちょっといいですか」と言いながら回っている二人組に聞いてください。

 ピリケンさん:「その他宗教雑貨店」で、「こっくりさん」の隣の棚です。

 阿含宗:焚き火をやっているのですぐに分かります。

 

真言宗の「おんあぼきゃべろしゃのまかぼだらまにはんどまじんばらはらはりた屋」ですが、枝雀はテレビ版でもCD版でもきちんと最後まで言えていません。米朝も途中で詰まっています。一番淀みなく言えたのは吉朝でした。高校生の頃、同級生のゴローくんは、これがスラスラ言えるのが自慢でしたね。

 

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