マルティン・ズーター

Martin Suter

1948年生まれのスイス、チューリッヒ生まれの劇作家、小説家である。広告代理店に勤務後、自ら広告代理業を始める。その後、コラムニストとして活躍する、最初の小説、「スモール・ワールド」がベストセラーとなり、「完璧な友人」が「ドイツ・ミステリー大賞」で2位となる。その後も、着実に、読者の心を捉える小説を発表し続けている。

「スモール・ワールド」

原題:Small World

日本語訳題:「縮みゆく記憶」

1997

とにかく読んでくださいと言うしかない小説。ズーターの出世作である。構成に少々難があるが、ストーリーは非常に面白い。

 

「月の暗い側」

原題:Die dunkle Seite des Mondes

2000

感想を述べるのに難しい小説である。ミステリーでもない。スリラーでもない。現代版「ジキル博士とハイド氏」と言うもおかしいし。

 

「完璧な友人」

原題:Ein perfekter Freund

日本語訳題:「プリオンの迷宮」

2002

なかなか面白い設定で、読み始めたときはワクワクしたが、ちょっと尻すぼみという読後感。狂牛病、CJDなど、最近の話題が巧みに散りばめられているのは、なかなかのもの。

 

「リラ、リラ」

原題:Lila, Lila

2004

ズーターの作品を読むのも三冊目。この「リラ、リラ」がストーリーも、文体も、構成も一番すっきりしている印象。キリッと明快ななかに、微笑ましい部分と、悲しい部分があり、私のお気に入りの作品になるであろう。主人公の優柔不断さには少々イライラがつのるが。

 

「ミラノから来た悪魔」

原題Der Teufel von Mailand

2006

童謡や童話の中の出来事が、実際に起こっていく。横溝正史の小説にもあったような気がする。アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」もそんな筋書きだった。この物語、筋立てはそれなりに面白い。ただ、余りにも沢山のテーマを詰め込みすぎて、ストーリー全体が散漫になっている気がした。

 

「料理人」

原題:Der Koch

2010

スリランカ人の亡命コック、マラヴァンの作る不思議な料理「ラブ・フード」、食べるとセックスがしたくなる。美人ウェートレスのアンドレアがマネージメントを引き受け、ふたりは二人三脚で「ケータリングサービス」を始める。果たして、成功するのだろうか。

 

「最後のヴァインフェルト」

Der letzte Weynfeldt

日本語訳題「絵画鑑定人」

2008

「料理人」の中で描かれた料理の世界など、毎回いろいろな世界を勉強させてくれるズーターの小説だが、今回は美術品の世界。美術品の愛好家と、それを相手にするオークションハウスの舞台裏が分かって面白い。

 

「時間、時間」

Die Zeit, die Zeit

2012

今回は、タイトルからも分かるように、「時間」をテーマにした物語。ふたりの男が、過去を再現することにより、時間を逆行させ、亡くなった妻に再会することを試みる。

 

「アルメンとトンボ」

Allmen und die Libellen

2011

美術品探偵事務所「アルメン・インターナショナル・インクワイヤリーズ」シリーズの第一作。金に窮して、万引きを繰り返していたアルメンが、最初の事件を解決し、執事のカーロスと一緒に、盗難にあった美需品の調査会社の設立を思いつくまでを描く。

 

「アルメンとピンクのダイヤモンド」

Allmen und der rosa Diamant

2011

アルメンとカーロスのコンビの織りなす「捜査活動」の第二弾。「トンボの皿」事件をきっかけに設立された「アルメン・インターナショナル・インクワイヤリーズ」であるが、注文の少なさに加え、アルメンの浪費癖が重なって、その経営は火の車であった。アルメンはある英国人から、盗まれた「ピンクのダイヤモンド」を取り返すことを依頼され、その鍵を握るロシア人を追う。

 

「アルメンとダリア」

Allmen und die Dahlien

2013

しばらくマルティン・ズーターの作品から遠ざかっているうちに、彼は、探偵小説のシリーズを書いていた。美術品の捜査を専門とする、「アルメン・インターナショナル・インクワイヤリーズ」の物語。所長のアルメンがアシスタントのマリアとカーロスの手助けを得て、盗まれた美術品を発見し、元の持ち主に返す方法を画策する。

 

「アルメンと消えたマリア」

Allmen und die verschwundene María

2014

「アルメンとダリア」の続編である。アルメンはダリアの絵を取り戻したものの、それは正当に買い戻されたものではなく、仲介者のクロード・テンツが新しい持ち主のレブラーから盗んだものであった。(元々その絵は、依然に二重意味で盗難に遭っていたのであるが。)テンツは殺され、アルメンに協力したマリア・モレノは誘拐される。

 

 

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